お墓に隠した、ランドセル【実話】

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おばあちゃん、どうして死んじゃったの。会いたい。助けてほしいよ。どこに逃げればいいの・・・

ランドセルを脱いで、周囲の人に怪しまれないようにおばあちゃんが眠るお墓の横に隠した。小学生が一人で墓地にいたら、すぐに「保護」という名目で、捕まってしまう。地獄の家に帰されてしまう。今、姿を消さなければ。この世からいなくならなければ、また見つかって捕まる・・・


私は、実の母親に捨てられたらしい。物心がついたときには既にいなくて、母の顔を知らない。5歳までおばあちゃんに育てられて、大好きな存在だった。わがままも言えて、おばあちゃんが、私にとってのお母さんだった。

お昼寝から起きると夕方になっていて、薄暗い家の中で急に怖くなって家じゅうを探し回る。

「おばあちゃん?どこ?おばあちゃんいないの?」

「ごめんよ、起きたんか、ご飯作るから待っとれ」

庭からおばあちゃんが何かの作業を終えて帰ってくる。安心した。お風呂に入るのも、眠るのも、出かけるのもいつもおばあちゃんと一緒だった。

そんなおばあちゃんは、私が5歳の時に亡くなった。54歳だった。

まだ死をよく理解していなかったが、大好きなおばあちゃんがいないということは分かった。そして、冬のある日、”新しいお母さん”がやってきた。そして私の地獄は始まる。

新しいお母さんは、私と同じくらいの姉妹を2人連れてきた。今日から姉が2人増えた。おばあちゃんはいなくなった。何が何だかわからないまま、私は今でいう「虐待」をされることになっていった。昭和の時代に、今ほどの厳しい虐待の取り締まりや、子どもを保護する制度は整ってなかったのだろうと、大人になった今は思う。

「掃除、しておいて。」

おばあちゃんに甘えてばっかりだった私は掃除も料理もできなかった。だから、へたくそで、雑巾を絞る事すらうまくできない。雪が降る寒い日で、水が冷たくて力が入らない。

「こうやって絞るんだよ。」

そう言いながら、私の腕を乱暴に、強く握り、ぎゅうっっと絞る動きをした。よく男子たちがふざけて「雑巾絞り~!」とかいって遊んでいるけど、痛すぎて声が出なかった。ふざけて遊ぶ男子たちのように、「いててて、やめろよ!」とはならなかった。

私は状況がつかめない。大好きなおばあちゃんを亡くし、知らない人たちが来たと思ったら、いきなりこの人は何をするんだ?どうしてこんなことするんだろう?とにかく、憎しみや怒りや悲しみなんかではなく、意味がわからなかった。


よくわからないまま、生活は始まっていった。

この家で私と血が繋がっているのは、父親と兄の2人。実の母は出て行き、大好きだったおばあちゃんはこの世にはいない。新しく「家族」となったのは、継母の礼子と、その連れ子である雅美姉さんと、みのり姉さんだ。お姉ちゃんだなんて思ってはいないけど、そう呼ぶように「新しいお母さん」に言われた。

「礼子さん」「新しいお母さん」「継母さん」・・・なんて言おうものなら簡単に手をあげられる。もちろん「お母さんと呼びなさい。」と言われたが、私は実の母を呼んだ記憶もなかったので、ここにはそれほど抵抗はなかった。

父は仕事人間で、家庭を顧みることはあまりない。今でこそ主夫だとかイクメンだとか騒がれているが、やはり当時は男は仕事、女は家庭が当たり前の時代だったから、私がこんな目にあっていることは知らない。何度もアピールしたけれど、すぐに継母にバレてしまう。子どもの考えることは、大人には簡単に見破られていたようだった。


朝、起きたらまずは雑巾掛け。上手く雑巾を絞れなければ、腕を絞られる。これがいつも通りの朝だが、苦痛でしかない。

ご飯の時間になる。卵かけご飯だ。1つの卵を、子どもたち3人で分ける。溶いた卵を順番にご飯の上にかけてくれるのだが、私は一番最初だ。お茶碗を見ればなぜ私が最初なのかすぐにわかった。白身しか、入っていなかったから。

他の姉さん2人は、黄身ばかりが入っていて美味しそうだった。羨ましかった。

お昼寝から起きたら、お尻が濡れていた。「おもらししちゃった・・・また怒られる・・・」と思って体を起こすと、水が入ったコップを持っている雅美姉さんが立っていた。私は咄嗟に聞く。

私「なにしてるの・・・?」

雅美「漏らしたの?きったなーい。」

夕食前。継母が洗濯物を畳むから来いと呼んだ。父の靴下が、片方見当たらない。

継母「お前だろ?」

私「違います・・・」

継母「探せ。」

私「いや、わかりません・・・」

継母「早く探せって言ってるんだよ!」

一生懸命探した。するとなぜか見つけてしまう私。

継母「そんなとこに隠してたのか。嫌がらせするんじゃないよ!」

私「ごめんなさい。」

よくわからないけど、私が無くしたことになっていて、それに従わなければまた暴力を振るわれる。父がいない日中は、本当に地獄だ。

父が帰ってくると、継母はこういう事はしなくなる。もうずっと父にいて欲しいと思ったが、そんな事を言ったらまずいと幼いながらも察することはできた。

父に嫌われるのは、継母も嫌だったのだろうなと思う。


次の日の朝食は、パンだった。トースターで焼いて、バターを塗っている。

私のお皿に乗ったパンは、真っ黒だった。他の姉さん2人は、こんがりきつね色で美味しそうだった。羨ましかった。

黒くて、固くて、コゲの味がした。あまり美味しくなかった。

洗濯物を畳む時は、今日はタオルが擦れているのを継母が発見した。使い古せば、生地は薄くなってもくるのに、また継母は私に聞く。

継母「お前、これどうやってやった?」

私「・・・やってない・・・・」

継母「早く答えろ!」

私「タワシで擦りました・・・」

継母「なんでそういう事するんだよお前は!」

答えても答えなくても、結果は変わらなかった。こんな理不尽な毎日が、ずーっと続いた。兄は6歳年上だったから、友達の家にでも泊まっていたのかな、だんだんと帰って来なくなった。

 

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